そうか、もう君はいないのか/城山三郎

 読んでよかったよというような本の備忘録です。
 これを見て、読んでみようと思われるのも光栄ですし、
 何か感じられることがあればと願います。

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そうか、もう君はいないのか
城山三郎
新潮文庫
平成22年8月 1日発行
平成23年7月25日十刷

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あらすじ
彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる――。
気骨のある男たちを主人公に、数多くの経済小説
歴史小説を生み出してきた作家が、
最後に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録だった。
終戦からの間もない若き日の出会い、
大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに家庭を築く日々、
そして病による別れ……。           表紙裏より抜粋

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感想

解説のある小説は後ろから読みます。
児玉清さんによる解説と娘さんの書かれたものです。
ひねくれ者の私はなかなか本編に辿りつけない。
辿りついてもいないのに文字が滲んでしかたがないのです。

城山三郎さんという作家さんは以前から知っていました。
歴史には興味がありますが、経済はたぶん難しくて分からない。
理由はいくつかありますが手に取ったことはありませんでした。
今回、古本屋さんで3冊いくらかで手にして、
そのまま積読本となっていました。
何かすぐに読めそうな軽めの本を探して抜き取ったのがこの本です。
眠るための本だったんですけど…眠れなくなってしまいました。

小説家のご夫婦の生活が赤裸々に綴られています。
若すぎた出会いの頃からさいごの2人の時間まで。
年輪を重ねた夫婦に訪れるその時。
子供たちを育て終えた後の生活、この夫婦の場合は初めての2人暮らし。
旅行に行ったり、外食を楽しんだりとお互いの気持ちを慮りながらの
2人の時間をを楽しんでいたところに別れがやってきます。
奥さまは優しい旦那さまに心を残して逝かれた。
それから仕事もされて、それでも満たされない日々のことが、
お嬢さまの文章に綴られています。
お母さまを亡くされたのは悲しかったはずですし、
日々、弱っていく父親の姿を見守るのは、辛かったでしょう。
城山さんの心は奥さまについて行っちゃたのかもしれません。
なんといっても彼女は妖精なのですから。